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# 06

【はじまりの話】価格のなぜに?答える
『70㎡』に込められたTry

マンションの話題は、さまざまな形で身近に存在する。
ポストに届いた物件広告、新聞、テレビ、SNS――
その中に小さく、「出典:東京カンテイ」の文字を見つけた人はどれくらいいるだろうか?
蓄積されたデータベースは会員だけでなく、一部を市況レポートなどとして公開している。不動産分野の性質から、時には国策に関連してメディアにレポートが取り上げられることもある。こうした対外的な情報発信を一手に担うのが、市場調査部だ。東京カンテイにしかつくることのできない指標を数々生み出してきた市場調査部の、現在にも続くはじまりの話。


市場調査部では月次コンテンツとして4本の市況レポートを発信している。その最も古いものが2002年に開始した「中古マンション70㎡換算価格」だ。

その頃まだ東京カンテイの名前をメディアで目にする機会は少なく、なんとか毎月取り上げてくれるようなデータが発信できないだろうかと、市場調査部ではいつも考えていた。

当時、対外発信ツールとしてあったのは、会員向け季刊誌の「Kantei eye」。
市場調査部研究員のほか、他の部署からも企画案を募り、次の新たな指標づくりが試みられている場であったが、「3ヵ月に一度の発行なので、毎月の市況が一目でわかるものを、なんとか出したいと必死になっていたのです。全員が 『当社の露出を伸ばしたい』その一心でした」と当時の研究員の一人は振り返る。

会員向け季刊誌の「Kantei eye」、創刊号と第100号

中古マンション価格の月次リリースに技術的な問題がないことがわかると、部内で「平均価格」を使うか「坪単価」を使うかで議論があった。
折衷案として生み出されたのが、「70㎡換算価格」。東京カンテイオリジナルの指標だ。

不動産業界では「坪単価」がよく用いられる。しかし、この表現は一般消費者向けとは言えなかった。一方で平均価格は、当時は今以上に都府県間で平均専有面積(住戸の広さ)に差が見られ、かえって比較がしにくくなるというマイナス面があった。
「これを解決するために、当時のおおよその平均的な専有面積である70㎡に置き換えることで、一般的なマンション価格のイメージに近い形で伝えることが可能になります。坪単価がベースとなっているのですが、誰が見てもわかりやすい方が、結果として記事になりやすいだろうという目論見でした」

「中古マンション70㎡換算価格」ほど、下積み時代が長いコンテンツはないという。
メディアに取り上げてもらうためにと思案し、発信したが、「とにかく始めはほとんど扱われませんでした。新築マンションのデータは毎月どこかの媒体で記事掲載されていましたが、悔しいかな、中古マンションの価格情報はそれほど重要視されていなかったのかも知れません」
ときどき掲載があったり、年間版が注目されたりする程度で、「毎月の記事化」という当初の期待は叶わなかった。

しかし世の流れというものは絶えず変化するものだ。世間で新築マンションに関するデータが発表される際に、東京カンテイの中古データも併せて掲載されることが増えてきた。「世の中が新築マンションだけでなく、中古マンションの価格や市況に注目するようになったのだと実感しました」

さらに、コツコツと丁寧に取材に応じていると、ある変化が現れた。中古マンション価格だけでなく、新築マンション市場の動向に関してのコメントも求められるようになったのだ。

市場調査部が発信するリリースの真の強みは、単にデータを出すだけではなく、その動向の根底にある要因まで説明することにある。
「価格が上昇したのであれば、上昇した理由をきちんと説明します。上昇するには要因がデータ上に必ずあるので、発表する前にその要因を研究員たちで議論し 、血眼でつかんでおいてから、取材に応じていたのです」

メディアの「なぜ」に真摯に答えを積み重ねる

価格が上昇する場合、いくつもの「なぜ」を重ねて掘り下げていくと、やがてデータでは語りきれない領域に至るという。なぜそうなったのかを語る際に、マクロ経済の動向に及ぶことも珍しくない。
データで十分説明しきれない段階では、「仮説」を用いることになる。「わからないことは素直にわからないと言うのですが、仮説に自信がある場合、それを説明します」

メディア側が納得してくれるかはわからない。しかし、もし納得したのであれば、それは「仮説」ではなくなる。メディアはそれを「一つの見方」として、「一つの見識」として見なす。そう見做せるものが記事になる。
「実は記者の人が求めているのは、この見方なり見識なのです。これを根拠立てて説明し、勇気を持って語ることがデータとともに重要な情報であり、市場調査部が心を砕いてきたことです」

現在の「中古マンション70㎡換算価格」は毎月必ず記事化される、注目度の高いコンテンツとなった。そして、東京カンテイ発信の指標は「PER」や「リセールバリュー」と確実に増えている。
これらは、市場調査部がメディアの「なぜ」に真摯に答えを積み重ねてきた結果と言える。指標の一つひとつに、市場調査部の軌跡があるのだ。

市況レポート「中古マンション70㎡換算価格」
https://www.kantei.ne.jp/report/category/70m2

「Kantei eye」ダイジェスト版
https://www.kantei.ne.jp/report/category/kantei-eye-special


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